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学生時代から医療課題への意識が強く、歯科課題への情熱を持つNOVENINE代表取締役竹山旭さん。とにかくアツく惹かれてしまうのはなぜか?竹山さんのマインドやパッションはこれからの医療で事業を考える人にとってのヒントになると思い事業に至った経緯や竹山さんの考えをお伺いしました!
また竹山旭さんの情熱の原動力・起業家マインドについては編集後記事にて。
株式会社NOVENINE 代表取締役社長 兼 CEO 歯科医師/医学博士
大阪歯科大学歯学部歯学科卒業。大阪歯科大学大学院歯学研究科口腔外科学専攻博士課程修了。その後、大阪歯科大学口腔外科学第1講座非常勤講師、堺市歯科衛生士専門学校講師、奈良県歯科衛生士専門学校講師などを歴任。
2019年、大阪府堺市に「竹山歯科口腔医院」開院。その人にとって必要な“正しい知識”を伝えることに注力している。また、株式会社NOVENINEの代表取締役歯科医師を務め、口臭を検知して疾患の早期発見につなげる歯ブラシ「スマッシュ」、オンライン歯科相談窓口「ブラシる」の開発・運用に携わっている。
歯学博士。日本抗加齢医学会認定抗加齢医学専門医、AHA認定BLSヘルスケアプロバイダー。BOCプロバイダー講座統括医師。研究歴、受賞歴多数。
1.NOVENINEのサービスとは
―NOVENINEについて教えてください
NOVENINEは、「歯科医療を通じて日本の医療の課題を解決していく」をミッションに掲げるスタートアップベンチャーです。事業内容はオーラルケアソリューションの提供を主軸としつつ、「保険のインシュランス」と「テクノロジー」を掛け合わせたインシュアテックという分野にも分類されます。
私たちは全ての人に「歯の悩みに囚われない自分らしい人生を創る」という想いの元、口腔に愛をもてるカルチャーを創り、それぞれの自由な人生を創出するためにオーラルケア事業をしています。
2.「歯科の課題解決は事業化すること」5つの実体験が転機に
―いつから歯科事業を意識していましたか?
身内が医師ばかりの中、私は歯学部へ入学したので「歯科医師のキャリア」のイメージがつかず、将来のキャリアを模索するため学生時代から学びにいく機会を増やしていました。 その中で軸に置いていたのは「歯科医師として成功する」ではなく「”生涯を懸けて従事できる仕事”にするために学ぶ」ことです。
現状の歯科の在り方、そして国内での歯科医療に対する評価に疑問を感じるようになり、解決する手段として事業化が適していると思いNOVENINEを始めました。
―当時の歯科医療に対する評価とはどういったことですか?
当時(2003年頃)国内の歯学部では「歯科医師天国の終焉・歯医医師が多すぎる・開院しても儲からない」などの話題が講義内容に挙がるほど、歯科業界ではネガティブキャンペーンが盛んに行われている状況でした。
▼体験1:海外留学で衝撃を受けた日本歯科の問題
大学3年の時期に、交換留学制度を活用しオーストラリアのシドニー大学歯学部に短期留学の機会を得たことで日本と海外では「歯科医師の評価や働き方の違い」を目の当たりにしました。国内の評価に絶望し、海外でライセンスを取り直そうと真剣に考えたくらいです。
―日本の歯科医師の働き方や評価は海外に比べて良くなかったと初めて知りました
また、それは同時に国内で今ある歯科医療スタイルが正しいわけではないと感じた実体験でもあり、日本の歯科医療をより良くするには?と常に課題意識を持つようになった原体験だったかもしれません。
▼体験2:学生プレ起業が自信に
在学生の多くが開業医になり経営者になるにも関わらず、学部教育では経営や経済の勉強はなく、歯学医学の専門のみを学びます。
医療と経済は必ず相関していますから、学生のうちから医療経済や経営について学ぶことが必要だと感じ、ビジネス書を読み始めるようになりました。最初に手にとった書籍が、当時話題になっていた本田直之氏の「レバレッジリーディング」で、なぜ多読する必要があるかが明確に書かれており、そこからビジネス書籍に限らず歴史や芸術関連の書籍も1日1冊ペースで読むようになりました。その後に大学5年生時に、経済的センスをもった歯科医師を養成するための「夢実現講座」という寄付講座を企画開催することになりました。
―学生時代からプレ起業ですね!どのようにして講座を開催したのでしょうか?
当時、損保ジャパンひまわり生命社様から100万円もの大金を出資していただき、著名な外部講師を招き開催しました。企画から実行までは大変でしたが、大阪歯科大学の川添学長は真摯に一学生の意見に耳を傾けてくださり、実現することができました。
自分の呼びかけで始めた一種のプレ起業は、貴重なビジネス面での成功体験となり企画実行することに対しての自信に繋がっています。
▼体験3:医療ボランティアで知った「日本人の口腔環境」の悪さ
その後、無事に歯学部を卒業し研修医になりました。
当時所属していた口腔外科学のOBの先生からミャンマーでの医療ボランティアに誘われ、すぐに現地に向かいました。有給を全て消化する結果となりましたが、学生時代から考えていた「”生涯を懸けて従事できる仕事”とは何か」を特に考えさせられる貴重な経験となっています。
―医療ボランティアもされていたのですね。忙しく大変なボランティアの印象です
当時軍事政権下のミャンマーでは、「貧困層も多く医療施設が少ないのでさぞかし口腔内は悪いだろう」と思い出向きました。しかし孤児も含めた500人ものミャンマー人の口腔内を診察した結果、その場しのぎ的な治療を繰り返した日本人の方が口腔環境が複雑になってしまい、総合的にみると日本人の方が悪いのではないかと感じました。
―歯科医院の数的インフラも質も上回っているはずなのに日本人の方が口腔環境が悪いのですか?!
日本人の口腔内環境は決して良いとはいえない(自然ではない)状況です。私はこれらの現象を「臨床的パラドックス」と呼んでいます。治療すればするほど悪くなっていく、という現象が起こっているのです。
治療を主軸とした従来の歯科医学を学び、実践しても日本人の口腔内環境はよくならない。そう思った私は、歯科医療の可能性をさらに知るために大学院進学を決めました。
▼体験4:研究員になって感じた大きな壁
大学院では「研究して虫歯や歯周病の特効薬を作れたら何百万人と救えるかもしれない!」という想いで研究に没頭した結果、学会で賞をいただくなど評価を得ることができました。
しかしながら、4年間ほぼ全ての時間を研究に捧げてきても全く世界が変わる手応えがありませんでした。直感的に「これでは自分が生きている間に変えることができない」と察しました。
―どの点で難しいと感じたのでしょうか?
特に肌で感じた大きな問題は研究費です。大学院中にコロンビア大学や京都大学iPS細胞研究所の医科系の研究室に所属していたことがありますが、医科は研究者の絶対数的にも歯科を圧倒していることから、科学研究費の配分が比較的多いといえます。その反面、歯科領域から新しい発見を生み出そうとするには色々と難しいことも多い。
研究は未知への挑戦、人類の英知の前進という感覚で非常に楽しかったのですが、社会実装されるところまでの道のりがあまりにも遠く不条理なものでした。
▼体験5:医療を変えるには事業と気づかせてくれた”iPhone”の存在
歯科医療が抱える課題の解決法は特効薬や先進医療の開発ではなく、正しい予防の知識や新しい医療の当たり前を普及することでした。そう思い始めていた頃、iPhoneが日本で普及し始め生活必需品になる様を肌で感じ「医療を変えるのは事業だ!」ということに気づきました。
―誰もがスマホに買い替えそこから”繋がり”が急激に変わりましたね!
多くの人がiPhoneを購入し今ではスマホのないライフスタイルは考えられない状態になっています。つまりビジネスは短期間で人々のライフスタイルを変えられる力があります。
歯科の課題解決は現場だけに留まらず「事業化することで解決するのでは?」と思い、起業に踏み込みました。
3.医療でも新しいやり方、テクノロジーと掛け合わせてよりよい医療を
歯科医院の院長とダブルワーカーでもあります。現場も知った上で事業を行うことが大事だと実感しています。医療現場の「処置を施すこと」や「正しい医療情報を届けるポピュレーションアプローチ (集団保健指導)」を大事にしながら医療のプラットフォーム事業を考えています。
―最近耳にする医師であり起業家と2つの顔をもつ「アントレドクター」ですね!
歯科のメジャー疾患である「う蝕(虫歯)と歯周病」は、絶対に罹患してしまう遺伝的素因が原因の疾患ではありません。適切な歯磨きや食生活に少し気を付けて、適度なタイミングでプロケアを続けることでほとんど予防可能です。この解決方法は”教育”に近いと感じます。
薬や治療に頼るのではなく、きちんと指導するということが重要ということです。
―予防ケアは薬や治療がメインではなく指導(教育)中心になった方がいいということでしょうか?
日本の歯科文化は、歯が痛くなってからクリニックにかけつけることが多いため削る治療になりがちです。
口腔の状態を数値化し可視化できる歯ブラシや、不安や疑問を感じたら来院前に気軽に相談できるようなオンライン窓口を設けることで、虫歯や歯周病の重症化を未然に防ぐことができると考えています。その考えを具現化したのが、「NOVENINE SMASH」や「ブラシる」です。
「もっと新しいやり方、テクノロジーと掛け合わせた新しいカタチとして創っていくことが今必要とされているのではないでしょうか。」
これまでの医療の良い部分を踏襲しながらも、今の常識に囚われず近未来のあり方を考えて実践していくことが重要だと考えています。そして法律の改正や社会保障の充実など、様々な医療課題を解決するには大きなエネルギーを必要としますが、大変革の前にもっと身近にできる事があり、その手段が事業化にあると信じています。
4.NOVENINEの描く未来
まだまだ日本の歯科課題はありますが、今後ますます変わっていくと思います。
日常のセルフメンテナンスやヘルスプロモーションの重要性は見直され、予防はもっと醸成されてきています。NOVENINEとしては、既にほとんどの生活者が当たり前に実践している「歯磨き」という予防行動をアップデートすることで、歯科医療を通じて予防医療そのものをアップデートできると考えています。これからも歯科医療とテクノロジーを融合したサービスの実現を目指していきます。
ステートメントは「口腔に愛を」
口腔を愛するカルチャーを作っていきたい!!
熱い想いのもとメンバーとともにこれからも奮闘していきます。
— 編集後記 —
編集後記では、取材中伺った「なぜこんなにアツい方なのか?原動力は?」「起業家マインドはどうなっているの?」と取材者の素朴な疑問に答えてくださったログです。
Q1.元々情熱的な性格、幼少期から社会貢献を考えていたのですか?
―自分が生きている理由や存在意義など小さいながらに考えてしまうタイプでした。「ルールだから」といった考え方や「〜だからできない」というようにできない理由を探すことに時間を使うことが大嫌いで、「やろうとしてないだけじゃないの!?」って思う考えが今につながっているのかもしれないですね。
Q2.そのモチベーションのキープ方法とは?
―ワークアズライフ!生きるように仕事する。By落合陽一
ただただ、やりたい!やり続けたい!という感覚です。今死んでもいいと思えるくらい1日100%生きよう!というマインドですかね。
Q3.ダラけたく・ネガティブになる事は?
―ダラけたくなると思考が停止し、ネット記事を読んだり、1つだけダウンロードしているスマホゲームを始めます。
昔は、普段は明るいが根暗な部分もあるってよく言われていましたが、今は裏表がなくなってありのままの自分で生きているなと思います。でもストレス溜まると食べちゃうんですよね。どんどん太ってしまうため、本格的なワークアウトをして10年前の体重に戻しました。笑
Q4.気になる起業家や目標としている方は?
―「これめちゃくちゃ恥ずかしのですがスティーブ・ジョブズですね(笑)」
彼はテクノロジーに詳しい訳ではなく、思想家・アーティストなんです。リーダーに求められるのは腕っぷしではなく、人々を正しい方向に導ける力、道なき道を切り開ける力だと思っています。彼は何回もそれを起こしているので天性の資質ですね。
Q5.常に前進する原動力の源は?
―色々な人に支えられています。
だから誰よりも頑張らないといけないと思うし、僕が諦めたら全部終わりますので、それだけは絶対にしません。今までの人生でいっぱい失敗もしてきましたし、今もうまくいかないことが多くありますが、成功するまでやり続ければ結果を出せることは経験から知っています。この姿勢を見せ続けることが、応援してくれている人々に対しての恩返しにも繋がると思います。
株式会社NOVENINE
〒530-0002
大阪市北区曽根崎新地1-13-22御堂筋フロンティアwework
MedionLife編集長。1994年生まれ 京都女子大学卒業。医療系IT企業に入社し、オンライン診療サービスの営業/コンサルティングに従事。オンライン診療情報サイトの重要性を感じたことからMedionLifeを立ち上げる。新しい医療を考える人たちのサポーターになっていきたいと考えている。