【東京都町田市】精神科訪問診療でのオンライン診療活用事例<後編>

「オンライン診療」65歳以上の患者もサポートがあれば利用可能


オンライン診療について、「都心エリア且つ患者の大部分が高齢者の私のクリニックなので、導入はちょっと…」と尻込みする医師の声をよく耳にする。また診療報酬改定後のニュース記事でも「僻地などの通院や往診が物理的困難なエリアでの活用がいいのでは?」や「スマートフォン所有者世代での利用が適正なのでは?」などのワードを多くみかける。しかし、都道府県別導入割合数を見ると、東京都に続き、神奈川県、大阪府、福岡県、愛知県と地方よりも都心部の導入が進んでいるのがわかる。※2019年神奈川県保険医協会政策部「オンライン診療」実態調査より

そこで今回は、つばさクリニックでオンライン診療の運営管理を行っている事務課長の森田さんから話をお伺いしました。

同クリニックは2年前から精神科にて在宅・外来でオンライン診療を活用しており、導入を始めた当初よりオンライン診療運営管理を行っています。今回のインタビューでは、65歳以上の患者利用、都心部における訪問在宅・外来として利用、オンライン診療の捉え方など、オンライン診療活用のリアルな声と前向きな話をお伺いすることができました。(前編の記事)

 

 マニュアルの完備・共有・院内連携があればどの患者様でも使えるようになった

本院のスタッフは20~30代が多く、スマホの扱いに慣れているということも大きな理由だと思いますが、導入に対して否定的な者はいなかったです。オンライン診療を始めた当初は、スタッフが10人程度でスタートし、ルールやフローなど誰が何をやるかなどの担当決めに四苦八苦した時期もありました。しかし、今ではスタッフも30~40人へと増え、全スタッフがオンライン診療に関する問い合わせに対応ができるようになっています。これは全スタッフが柔軟に対応してくれたことやチャレンジ精神があったことが大きな要因だと思います。

例えば、事務の男性スタッフが元のマニュアルを当院専用マニュアルへとアップグレード (精神科利用想定の記載、操作画像もより詳細に記載等) してくれた事などがあります。今でも時間を見つけ、わかりにくい部分をその都度加筆修正してくれています。意識の面でも、ご案内しづらかった患者様に対しても、スムーズに診療できるようにといった意識を全体が持っているので、院内全体が連携できているのだと思います。

 

(つばさクリニック事務スタッフの方)

「高齢者=できない」と見切らないほうがいい

あくまで当院の考えですが、患者様の病態や性格・ご家族の協力体制などを考慮すれば、老若男女問わず使えると思います。当クリニックでは、タブレット等の操作方法を事前に説明する時間をつくる等、様々なことに取り組んでいます。例えば、訪問診療で伺っていた、独居で高齢の患者様はスマートフォンの操作が出来たので、オンライン診療を導入しました。病状も安定していたので、頻繁な訪問よりもオンライン診療の方が患者様としてはありがたかったようです。

施設入居の患者様に活用している事例もあります。以前は職員の方が2名の患者様に付添い、来院していましたが、外出のための準備が難しい・時間がかかるということでオンライン診療を勧めました。このように、オンライン診療には高齢の患者様にこそ、様々な活用方法があるように思います。

 

使用しているからこそ感じる課題と理想

課題としては、まず患者様にオススメしてもお断りされるケースがある点です。「近所に住んでいるし、今まで通りでいいかな。」「スマホの画面ではなく、やはり先生と直接会ってお話したいですね。」という意見がみられます。病状などをみてオンライン診療ができる対象だとしても、患者様のご希望、受診スタイルに沿えないこともあるということですね。また、ルールがややこしいところも患者様が積極的になれない要因のひとつだと思います。もう少しルールが緩和され、医師の診療方針に対する裁量権が大きくなると、よりオンライン診療は拡大していくと思います。

今後は他のクリニックでの導入が増えていけばいいなと思っています。他院との情報交換が活発になれば、更に便利な活用方法が見出されるかもしれません。その様な情報交換ができる医療機関が増えていくのが、オンライン診療導入医療機関としても、患者様としても理想だと思います。医療機関としては、今後、診療報酬点数の改定に期待しています。今よりも保険適応の疾患が増え、高い点数が付けばいいなと思います。患者様からお金を頂くことはあまり現実的ではないので、きちんとした診察の一環として診療報酬点数を付けて頂ければ、導入医療機関の増加や患者様からの認知増加も見込めると思います。それにより、医療機関間のコミュニケーションも過密になれば、オンライン診療がよりよいものになっていくと思います。

 

 なぜオンライン診療を2年以上利用できているのでしょうか?

前述したように、初めから否定的にならなかったことが大きな理由かもしれません。また、当院は新しいもの好きだったこともあるかもしれません。気になるものは導入してみるという姿勢なので、オンライン診療の導入にも前向きでした。反対や後ろ向き意見もほぼでなかった為、早めの段階で始めることが出来たのだと思います。運用面の工夫に関しては、導入当初は予約枠を確保することや日程調整など先生が行っておりましたが、現在は事務が操作しているので先生の手間が省けています。

具体的には、(患者様からの問い合わせ)→(医師に予定を確認)→(予約確保)といった流れで運用しています。職員全員が共通のメールやスケジュールを確認しているので、いつどの患者様がオンラインでの診療なのか把握できている状態で、自ずと院内連携できています。対面診療の完全予約制を取っているイメージです。

 

(患者視点:オンライン診療中の画面)

オンライン診療について

今回は導入クリニックの一例としてガイドライン改定前からオンライン診療の活用が出来ている当院のお話をさせて頂きました。オンライン診療を利用したい患者様や、導入を検討している他のクリニック様、ガイドラインを整備する厚労省などに対して、患者ニーズがあること、そして精神科在宅でもオンライン診療を活用できているというポジティブな情報が伝わればいいなと考えています。私達自身も他院にオススメしたくても勧め方がわからないのが現状です。導入医療機関として言えることは、患者様のニーズのマッチが大事だということと、精神科でも意外と使える!といったところです。

精神的な負担から外出したくない・他人と会いたくないという患者様も多くおり、オンライン診療に対する潜在的ニーズがたくさんあります。オンライン診療はその様なニーズを一つ一つ患者様の症状や状態に合わせて解決することができるツールだと思います。

 

実際活用していて感じたことや、思ったことを率直にお話しましたが、皆さんそれぞれにオンライン診療に関する見解があると思います。
当院としては、一人でも多くの困っている患者様へ医療をお届けしたいという思いと、新しい医療の形を取り入れていこうというチャレンジ精神のもと、オンライン診療を導入いたしました。迷われているクリニック様はぜひ一度、各システム事業者などにお話を聞いてみてください。意外な発見や新たな可能性が見つかるかもしれません。

Profile (プロフィール)
同行事務課長 森田夏貴 / Natsuki Morita
1986年兵庫県神戸市生まれ。青山学院大学法学部卒業後、つばさクリニックにてオンライン診療の導入などに従事。現在は同行事務課長、兼、地域連携室相談員として幅広い業務を担当している。院長 鈴木智広 / Tomohiro Suzuki
1974年群馬県生まれ。秋田大学医学部卒。佐久総合病院、館林厚生病院、永生病院、ホリィマームクリニック海老名を経て、2012年5月14日つばさクリニック開院。現在は院長兼医療法人社団おおぞら会理事長。精神科を中心に、内科全般を幅広く診療している。

医療法人社団おおぞら会 つばさクリニック
院長鈴木智広が2012年東京都町田市に開設。精神科、内科の訪問診療を中心に、町田市、多摩市、八王子市、神奈川県相模原市、大和市など広いエリアで地域密着型として展開。現在は患者数1300名を超え、常勤医師1名、非常勤医師19名、スタッフ40名を超える規模に成長。2017年にオンライン診療を導入し、現在は月に10名ほどの患者様に活用している。

 

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前編:精神科訪問診療でのオンライン診療活用事例

 

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