目次
服薬指導とオンライン服薬指導
服薬指導とは
対面での服薬指導
「服薬指導」とは、薬剤師が患者に対して、くすりの正しい服薬方法を説明することを指します。
くすりは正しく使われて初めて有効なものとなるため、服薬指導はとても重要な役割を担っています。
薬剤師は、医師からの処方箋を元に薬を調剤し、患者へと渡します。このとき、ただくすりを渡すだけではなく、そのくすりについての情報も併せて提供することが薬剤師の義務となっています。日頃わたしたちが調剤薬局で薬をもらうときに受ける説明、それが「服薬指導」です。
また、一般用医薬品のなかでも、第一類医薬品(注1)に分類される医薬品を購入する際も薬剤師からの服薬指導が義務となっています。服薬指導の内容は、くすりの服薬時間や服薬回数・服薬量などの基本的な情報から、保管方法や副作用、注意が必要な飲み併せ・食べ合わせなどの説明も行います。
服薬指導を行うことで、患者の自己判断による服薬中止や服薬量の増減を防ぎ、適切なくすりの服用を促すことが出来るのです。
(注1)第1類医薬品とは…一般用医薬品(OTC医薬品)の1つで、一般用医薬品の中で最も副作用が生じる恐れが高い医薬品のこと。
オンライン服薬指導
「オンライン服薬指導」とは、服薬指導をビデオ通話などの手段を使ってオンラインで行うことです。
薬剤師法および医薬品医療機器等法では現状、服薬指導は対面で行うことが義務付けられていますが、オンライン服薬指導は国家戦略特区内で特例として実施が許されています。
現在オンライン診療を行った場合、処方箋が郵送で送るガイドラインとなっているので、服薬指導は対面で行います。
オンライン服薬指導が行えることで、オンライン診療~オンライン服薬指導といった一気通貫した診療を行うことができることにより利便性の高い医療をつくりあげることを目指しています。
国家戦略特区でのオンライン実施
オンライン服薬指導の現状
オンライン服薬指導は、オンライン医療の一元化に向け、国家戦略特区にて2018年から試験的に実施されています。
「世界で一番ビジネスをしやすい環境づくり」を目的として、全国的に定められている法令、税制などの規制を緩和したり、優遇を行なったりする制度が適用される地区のことです。
(参考URL:「https://nomad-journal.jp/archives/5898」)
この様な特区において成果が確認され、エビデンスが蓄積されれば、法改正や財政確保などがしやすくなり、将来的に全国で活用出来るのではないかと期待されています。
医師会の見解
しかし、日本薬剤師会はやや消極的な姿勢をみせており、あくまでも、国家戦略特区での動向を踏まえた上で、「対面での服薬指導を優先させたほうが良い」「オンライン服薬指導の導入は慎重に行うべき」としています。患者のもとに届くくすりは、従来のものと変わらないため、一歩間違えば、重篤な副作用を発生させる可能性もあるため、慎重な姿勢を見せています。
また、日本医師会は懸念を示しており、オンライン診療はあくまでも「対面診療の補完に留まる」とし、オンライン服薬指導の普及に伴う、オンライン診療の拡大に懸念を示しています。
特区による実証実験
僻地での実証
オンライン服薬指導は現在国家戦略特区での実証実験の段階です。
その一例として、愛知県豊根村が挙げられます。豊根村には薬局が1軒もなく、医師不足や高齢化などの問題がありました。慢性的な病気があっても通院までの手間がかかったり、交通の足が少なく満足な時間が取れない、持病等により外に出るのが困難な患者も多数いるそうです。
2018年5月より愛知県において遠隔服薬指導事業が認められたことを受け、医師・薬剤師の負担を減らしながらより多くの患者のサポートをおこなえると想定し、オンライン診療とオンライン服薬指導を活用した実証実験が行われました。
患者は自宅に居ながら医師の診察を受け(オンライン診療)、手元に処方薬が届いた後、薬剤師から適切な服薬指導(オンライン服薬指導)を受ける流れになっています。
このような僻地による実証実験は徐々に増えています。
(参考URL:https://medrt.co.jp/pr/pdf/news-2018-1116.pdf)
都市部への拡大
都市部への実証実験拡大のため、2019年9月に厚生労働省は施行通知を改正しました。
僻地だけでなく都市部でもオンライン服薬指導を行うことが可能になります。現在の法令では国家戦略特区での実証実験のみが可能であることは変わりませんが、国家戦略特区である東京都や神奈川県などでの実証実験が進めば、今後都市部での実験結果が収集され、全国での施行に向けて進んでいくことになるでしょう。
また、今回の通知改正では、「患者が一定の条件を満たす場合、居住区に関わらず、オンライン服薬指導を可能とする」と記載されています。
オンライン服薬指導のメリット
現在オンライン服薬指導は未だ実施に向けた実験段階でありますが、現在得られている実証実験の結果からは、下記のようなメリットが見込まれています。
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・ 患者の移動や待ち時間などの負担軽減
・ 訪問薬剤師などの負担軽減・業務効率化
・ 慢性疾患等の治療中断の減少、重症化防止
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僻地だけでなく、現代社会の変容による家族や働き方などの変化が著しい都市部では、就業世代や子育て世帯に対して、オンライン服薬指導のニーズがあると考えられています。
薬局・薬剤師の立場からみても、高齢化による在宅診療の増加見込みなどを考慮し、業務効率化は必須とされています。
また、オンライン服薬指導が現状、慢性疾患等の通院の手間を省くことに有効性があるのではないかと考えられています。慢性疾患患者の通院負担を軽減し、通院率を上げることにより、症状の重症化を防ぐことが想定されています。
オンライン服薬指導を行えることで、将来的に医療費抑制の効果が見込めると想定されます。
現状では実験段階のオンライン服薬指導ですが、医療のIoT化に伴い、より便利に正しくくすりの服用が可能になっていくでしょう。
オンライン服薬指導の課題
オンライン服薬指導はテレビ電話を用いて行われるため、「通信環境」や「患者の情報リテラシー」が課題になっています。
現在は4G回線ですが、5G回線になればタイムラグがなく画質もより綺麗に見え、より対面に近い形でできるようになります。2020年2月頃からコロナウイルスの影響より、医療でもビデオ通話などの情報通信機器を用いてオンライン上で診療を行う「オンライン診療」が世に広まり普及の兆しにつながりました。しかしインフラ整備やどう利用できるかまでは広がっていません。
また、高齢者のスマホ所持者も増加しましたが、スマホを使用した診療方法やアプリケーションのダウンロードをどのようにして使用するかなどを説明できるノウハウまでが各薬局で広がっていないことは現状の課題と言えるでしょう。
他にも、
・配送料金の負担
・配送手段
・配送中の温度や湿度
などの品質保全などの「配送に関する課題」や高齢者へのシステム操作やサポートが必要な患者への対応の充実が求められています。
オンライン服薬指導はこれらの課題をクリアすることによって、より発展していくと言えるでしょう。
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MedionLife編集長。1994年生まれ 京都女子大学卒業。医療系IT企業に入社し、オンライン診療サービスの営業/コンサルティングに従事。オンライン診療情報サイトの重要性を感じたことからMedionLifeを立ち上げる。新しい医療を考える人たちのサポーターになっていきたいと考えている。